※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)
錫石 cassiterite SnO2 [戻る]
正方晶系 一軸性(+),ω=1.99〜2.01 ε=2.09〜2.10 ε-ω=0.10
※屈折率・干渉色は高いものの,同構造であるルチルよりも低い。
形態:自形のことがやや多く,粒状〜短柱状。熱水鉱床のものは時に針状で,それが放射状集合体をなすこともある。
色・多色性:濃淡の褐色,無色。多色性は濃色のものでも,弱いか,認められない。
※ルチルや錫石は,還元環境下でできると原子配列の酸素のサイトが空孔になり,そこに電子が捕捉され,そこで光が吸収され暗色(濃色)になる。
双晶:ルチルと同じく,時に(1 0 1)に対する双晶をなす。柱状のものが双晶をなす場合,V字型に見えることがある。
へき開:ほとんど認められない。
消光角:結晶の伸びに対し直消光。
伸長:結晶の伸びのC軸に対し,正だが,干渉色が高いのでわかりにくい。
累帯構造:褐色のものは色の濃淡の累帯構造が認められることが多い。
産状 花こう岩に関係した気成鉱床や熱水鉱床に鉄マンガン重石・硫砒鉄鉱・砒鉄鉱・黄銅鉱・黄錫鉱・白雲母・石英・蛍石・緑泥石・鉄電気石等に伴い産する。気成鉱床ではトパーズ,熱水鉱床では黄鉄鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱などを伴うことも多い。 気成鉱床のものは高温で酸素に乏しい条件下で形成されたものが多く,部分的に酸素のサイトが空孔になり,そこに電子が捕獲され光の吸収を起こし,褐〜濃褐色のものが多い。 熱水鉱床のものはそれより低温で酸素に富む条件で形成されたものが多く,褐色のものもあるが,酸素のサイトが酸素原子によりほぼ完全に充填された無色のものも少なくない。 時にペグマタイトに産し,それはSn(+4価)よりも価電子が多いNb(+5価)を数%含み,余った電子が空孔の酸素のサイトに捕獲され,ほとんど不透明の暗褐色〜黒色のものが多い。 ※錫石は,しばしば一緒に産する褐色系の電気石に似るが,錫石は正号結晶で,多色性は弱く,屈折率・干渉色は電気石よりもはるかに高い。また,錫石には電気石のように青味を帯びるものはほとんどない。 |
![]() 気成鉱床中の錫石(平行ニコル) 自形〜半自形の粗大な粒状が多く,結晶中心から周辺にかけて,濃淡の褐色の累帯構造をなすことが多い。 |
![]() 熱水鉱床中の錫石 Cas:錫石,Qz:石英,Ms:白雲母,Chl:緑泥石 これは花こう岩による接触変成作用で砂岩がホルンフェルス化するとともに,その後の熱水作用でその中に錫石を伴う細い石英脈ができ,その石英脈に沿う砂岩中に熱水変質鉱物として微細な白雲母+緑泥石の緑褐色の集合体が生じているもの。 錫石は気成鉱床のものよりやや細粒で,累帯構造も顕著ではない。屈折率が高いので平行ニコルでは一見,ざくろ石のようにざらついたように見え,干渉色も高いのでクロスニコルではくすんだ虹色に見える。 鹿児島県鹿児島市錫山(岩屋鉱床) |